KIKAIKEN MEDIA
キカイ研メディア
2025.11.07
溶接で起こるトラブルの原因と優先判断基準とは?

溶接直後に「割れが出た」「気孔ができた」「ビードが不揃いだ」という悩みは、技術者なら誰でも経験したことがあるのではないでしょうか。
そのような状況下でいち早く原因を見極め、最小限の手間で修正できる対処策を知っておくことが、緊急時の品質と納期を守る鍵となります。
この記事では、典型的な溶接不良を例に、なぜ起きるのか/見落としがちな原因/現場対応手順 を段階的に解説し、さらに対応を超えて品質アップにつながる知見も紹介します。
よくある溶接不良と原因・見落とし要因
表面不良:気孔・スパッタ・アンダーカットなど
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気孔(ポロシティ):溶接金属中にガスが閉じ込められた穴。主な原因は母材やワイヤの汚れ・湿気、シールドガス遮蔽不良、レーザー出力が低い、溶接速度が遅いなどです。
MIG溶接での典型的不良の一つ。 -
スパッタ:溶融金属の小さな飛沫が周辺に飛んで固まる不良。主因は過大電流、アーク長すぎ、過剰熱入力。
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アンダーカット:溶接縁部で母材がけずられたようになる不良。電流過大、進行速度遅すぎ、トーチ操作不安定などが原因。
【見落とし要因】
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シールドガスノズル詰まり、ガス配管のリーク
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ノズル・ライナー内部のスパッタ付着によるガス流遮断
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アークブロー(磁気影響によるアーク偏向)によって溶接線が乱れる現象
内部不良:融合不良/不完全貫通/スラグ巻き込み/割れ
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融合不良/不完全融着:母材と溶接金属が完全に溶け合っていない状態。電流不足、トーチ角度不適合、ワイヤ長すぎ、ワーイヤー送り速度が遅すぎる、溶接速度が速すぎるなどが原因。
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不完全貫通:溶接金属が根元(母材の接合ライン)まで届いていない状態。設計ギャップ不良、入熱不足、進行速度過速、溶接速度が速すぎる、母材の厚みに対し出力が低すぎるなどが要因。
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スラグ巻き込み:溶接中、スラグ(溶接助材・フラックスの残留物など)が溶融金属中に取り込まれる不良。前パスのスラグ除去不足が典型。
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割れ(クラック):最も致命性の高い不良。熱収縮・残留応力・水素脆化(ハイドロジェンエンブリトルメント)などが原因。
【見落とし要因】
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冷却速度制御不足(急冷がひび割れ誘発)
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材料中の残留水素・湿気吸収
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多層溶接履歴間の熱影響部の累積ひずみ
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残留応力集中設計(溶接線配置や引張方向との兼ね合い)
現場対応の流れと優先判断基準
緊急時に迷わず動けるよう、次のようなステップと判断基準を持っておくことが大切です。
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表面確認:亀裂、気孔、アンダーカット、過剰盛りなど目視チェック
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環境系チェック:ガス配管、ノズル状態、風の影響、ガス遮蔽不良
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溶接条件確認:電流・電圧・進行速度・トーチ角度・ワイヤ長などを振り返る
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簡易再現テスト:スクラップ材で条件を変えてトライして原因推定
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補修実行:欠陥部を除去 → 再溶接
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非破壊検査:超音波探傷や磁粉探傷などで内部欠陥有無を確認
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改善策策定:記録を基に再発防止策を定着
特に、表面と内部不良の優先度判断を最初に行い、致命的な割れを最優先で処理することが重要です。
欠陥別における具体補修手順と注意点
以下に、代表的な不良への補修手順を示します。
気孔・ポロシティの補修
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欠陥箇所を含み2~3㎜余裕をもって除去
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周囲を清掃・除油・除湿
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乾燥済みワイヤ/溶接材料使用
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再溶接は少しずつ溶加しながら監視
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補修後は再検査
割れ(クラック)の補修
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少し広めに除去(割れ終端+5〜10mm程度まで)
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予熱/後熱処理を検討して残留応力緩和
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溶接は段階的に、熱制御を厳格に行いながら補填
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補修後、非破壊検査で亀裂再発の確認
融合不良・不完全貫通・スラグ巻き込みの補修
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不良部を切除・清掃
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適切な溶接パラメータ(入熱量、ワイヤ径、角度など)で再溶接
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スラグ残存リスクを避けるため、ビード間クリーニングを徹底
注意点として、補修段階で無理をして広範囲を一気に溶接しようとすると、新たな応力やひずみを生む可能性があるため、段階的かつ制御された施工が望ましいです。
キカイ研で技術支援の相談をしませんか?
自社で対応が難しかったり、補修設備が足りないなら、技術拠点を活用する方法もあります。
マスナガ キカイ研究所(キカイ研) は、以下の支援が可能です:
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FACTORY エリアの金属加工・溶接設備 による実際の補修や部品再作成
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PRO‑SHOP 部材・工具調達機能 による急な材料や工具不足への対応(会員登録が必要)
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交流空間や実践ワークショップ によるノウハウ共有と学びの場
「技術力を補強する拠点」として使えるのがキカイ研の強みです。
拠点をうまく活用すれば、トラブル対応のみならず、品質安定・改善の起点にもできます。
FAQ(よくある質問)
Q1. 小さな亀裂なら様子見でもいいか?
A1. 「溶接クラック(weld crack)」は、溶接欠陥の中でも最も危険で、構造物の破壊に直結する欠陥です。
したがって補修は慎重に行う必要があり、原因除去 → 欠陥完全除去 → 再溶接 → 検査の流れが基本になります。
Q2. 非破壊検査なしで判断できる目安はありますか?
A2. 目視で亀裂・穴・アンダーカットなどが明らかな場合、それを起点に補修を検討するのが得策です。ただし内部欠陥は非破壊検査を使って確認することが理想です。
Q3. キカイ研の利用手順はどうなりますか?
A3. まずは会員登録(PRO‑SHOPmembership/FACTORYmembership)が必要です。その後、設備利用予約をして拠点を使う流れになります。
まとめ
溶接トラブルに直面したとき、最初に抱く疑問を起点にして原因を深掘りし、見落としがちな要因に着目しながら段階的に対応することで、トラブルを最小化できます。
しかし、設備・技術体制が限られている現場では、すべてを自社だけで解決するのは難しい局面もあります。
そんなときこそ、マスナガ キカイ研究所(キカイ研) のような拠点を「技術支援拠点」として活用することが、品質改善と対応力強化の近道になります。
キカイ研にご興味をお持ちの方は、会員プランページ をご覧ください。
また、設備や支援内容に関してご不明点があれば、どうぞ お問い合わせフォーム よりお気軽にお問い合わせください。
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